2014年11月15日土曜日

テイラー・スウィフトの変身

テイラー・スウィフトの新しいアルバム『1989』が、アメリカで2014年10月27日(月)に発売されました。なんと、翌日火曜日には、既にミリオンセラーを記録したということなのですが、これ以前に、発売1週間でミリオンセラーを記録したのは、やはりテイラー自身の2012年のアルバムRedだったのだそう。凄まじい人気ぶりです。

そのアルバムからの1枚目のシングル、Shake It Off を聴いてみんな驚きました。これまでのカントリー調を脱ぎ捨てて、よりポップな方向に大変身を遂げています。そんなこともできるのか、とか、カントリーはどうなっちゃうの?とか、様々な声が聞こえてきます。お姫様のようなドレスを着ていたり、あくまで可愛いアイドルだった前作までのイメージをぶち壊して、敢えてへたっぴなダンスを披露して、捨身というよりむしろ、はじけてしまって楽しんでいるような感じ。アメリカでも日本でも、男女を問わず、イメージチェンジといえば、セクシー路線に走るのが定石のようなのに、この変身は新しい。すっかりテイラー・スウィフトを見直してしまいました。アルバムの発売当日に、エド・シーランが、

 ”Go grab yourself @taylorswift13's new album, it just came out and it's stellar -  http://smarturl.it/TS1989(すぐにテイラー・スウィフトの新しいアルバムを買っておいで。今日でたばかり。素晴らしいよ)

とツイートしていました。エドが知らせなくてもみんな知ってるよ、
一緒にツアーを回ったからかな、律儀な人だな、と思っていたのですが、それだけじゃない。きっと、本当に素晴らしいと彼も思ったに違いないという気がします。

アメリカの公共ラジオ"NPR"からも、テイラー・スウィフトの、新しいアルバムについてのインタビューを知らせるツイートが流れてきました。

”We are dealing with a huge self-esteem crisis. These girls are able to scroll pictures of the highlight reels of other people's lives, and they're stuck with the behind-the-scenes of their own lives. They wake up and they look at their reflection in the mirror, and they compare it to some filtered, beautiful photo of some girl who's really popular and seems like she has it all together. This is not what you and I had to deal with when we were 12. It's so easy and readily available to compare yourself to others and to feel like you lose.”
(女の子たちみんなの自尊心は、今、危機的な状況にあっていると思うんです。こういう女の子たちって、画面をスクロールして他の人の生活のハイライトシーンばかり見る、そういうことが可能です。そして、自分自身の生活では、「撮影裏話」みたいなところにいて、行き詰っている。朝起きて、鏡の中に写っている自分を見て、その姿を、誰か他の女の子の、選び抜かれた美しい写真と比べるのです。その女の子はすごく人気があって、何もかもすべて手にしているように見える。こういうのって、私たちが12歳の頃には考えなくてよかったことです。他の人と比べて、ものすごく簡単に、安易に、負けたような気分になってしまう。) 
”I'm 24. I still don't feel like it's a priority for me to be cool, edgy, or sexy. When girls feel like they don't fit into those three themes, which are so obnoxiously thrust upon them through the media, I think the best thing I can do for those girls is let them know that this is what my life looks like. I love my life. I've never ever felt edgy, cool, or sexy. Not one time. And that it's not important for them to be those things. It's important for them to be imaginative, intelligent, hardworking, strong, smart, quick-witted, charming. All these things that I think have gone to the bottom of the list of priorities. I think that there are bigger themes I can be explaining to them, and I think I'm trying as hard as I possibly can to do that.”
(私は24歳です。でもいまだに、カッコイイ、今っぽい、セクシーとかいうのは、私が優先したいことではありません。女の子たちが、自分がこの3つのどれにも当てはまらないような気がしていても、メディアが鬱陶しいほど押し付けてくるのです。私がこういう子たちにしてあげられることは、「私の生活はこうなんだよ」って知らせてあげること。私は自分の生活が大好き。でも、自分が今っぽいとか、カッコイイとか、セクシーだとか思ったことはありません。一度もです。そんなの全然大切なことじゃないし。想像力がある、知的、頑張り屋、強い、賢い、機転が利く、魅力的。そういうことの方が大切です。こういうことって、これまで、優先順位の下の方になってしまっていたんじゃないかと思う。もっと大きなテーマがあって、そっちを女の子たちに伝えてあげることができるんじゃないかと思います。精一杯がんばって、そうしてるつもりなんです。)
彼女の曲を聴いて、歌詞を読んでいつも思うのは、この人はなんと真面目な人だろうか、ということです。不器用なほど生真面目だと思います。うっかりすると見逃してしまうような、小さな足跡、何かの兆しみたいなものを、怠ることなくいつもいくつも拾い集めていて、それを紡いで詩を編んでいく。隠したり、ごまかしたり、偽ったりするのは、どうしてもどうしても、許せない。だから、おそらく、過去の自分の恋愛に真正面から向き合って、ごまかしたり、偽ったりした相手を責めて・・・。そんな風にして曲を作っているのではないでしょうか。

彼女が中・高生だった頃、カントリーが好きなことでいじめにあったこともある、という話を聞いたことがありますが、たとえ、ダサかろうがからかわれようが、自分の好きな音楽を偽ったりごまかしたりなんて、彼女にできるはずはない。誰が何と言おうと、やっぱり彼女はカントリーが大好きで、自分がカントリー歌手であることに誇りと喜びを感じている。マスに流されることなく自分の考えで進んでいく、そのまっすぐな姿勢が、結局彼女の一番の魅力なのではないか。そう思いました。

引用:The quoted part is from:

2014年11月1日土曜日

「アートの言語は母語ではない」-ジャネット・ウィンターソンの言葉から-

以前どなたかが、人のツイートやYouTubeのおすすめを見ても、良いと思えなかったり、笑えなかったりすることはよくあり、人と人とは違うものだと痛感する、と言われているのを聞いたことがあります。たとえ、母語が同じ人同士であっても、趣味や興味、専門分野、仕事や生活が違えば、使う言語も違ってくる。言語が違えば、認知の受け皿になるものが変わってくるわけで、そうなると異なる人間同士、共有できないものがあっても、当然といえば当然だといえるでしょう。いや、言語の違いよりも先に、そもそも認知自体が人それぞれに異なっているから、どんな言語をもってしても、お互いを共有できない、ということなのかもしれませんが。


     
いつも、心に響く文章を紹介してくださるbrainpickings (http://www.brainpickings.org/) のツイートで、superb(素晴らしい)という言葉と共に、以下の文章が紹介されてきました。
"I had fallen in love and I had no language. I was dog-dumb. The usual response of “This painting has nothing to say to me” had become “I have nothing to say to this painting.” And I desperately wanted to speak. Long looking at paintings is equivalent to being dropped into a foreign city, where gradually, out of desire and despair, a few key words, then a little syntax make a clearing in the silence. Art, all art, not just painting, is a foreign city, and we deceive ourselves when we think it familiar. No-one is surprised to find that a foreign city follows its own customs and speaks its own language. Only a boor would ignore both and blame his defaulting on the place. Every day this happens to the artist and the art."
(私は恋に落ちてしまった。でも、何も言葉が出てこないのだ。バカみたいに呆然とするほかなかった。「この絵は何も語りかけてこない」と思うとたいてい、「この絵について、何も語ることはない」という言葉が後に続くものだが、そんなことはない。私はどうしても何か語りたかったのだ。ずっと絵に見入るというのは、異国の街に立つのと同じことだ。どうしても話したくて、やけくそで、キーワードを1つ2つ、さらに単語を並べてみて、少しずつ沈黙を破る。アート、ただ絵画だけでなく、全てのアートは、異国の街だ。どこも似たようなものだと思うと、裏切られる。外国では皆、その街のしきたりに従って、その国の言語を話す。そのことに誰も驚いたりはしない。言語にも慣習にも注意を払わず、自分が相手にされていないと咎めるのは、単なるマナー違反だ。毎日、アートとアーティストには、こういったことが起きているのだ。) 
"We have to recognize that the language of art, all art, is not our mother-tongue."
(アート、あらゆるアートの言語は、自分の母語ではない。このことに気づかなくてはならないのだ。)
この文章は、Jeanette Winterson というイギリスの作家が書かれたということですが、「異国の街」というメタファーが美しく、気が利いていて、本当に superb です。芸術作品というのは、ある人の認知がそのまま色や形で表現されるわけで、共有するものが見つからない、見つかったとしても、それを言い表す言葉がみつからない、というような事態は、起こってもけして不思議ではない。アートを前に、心を動かされたり、衝撃を受けたりするものの、それをどうすることもできず、途方にくれてしまうような、あの気持ち。「あらゆるアートの言語は自分の母語ではない」と考えると、妙に納得です。

引用:The quoted part is from;
http://www.brainpickings.org/2014/10/27/jeanette-winterson-art-objects/?utm_content=bufferba634&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer