2017年2月14日火曜日

独りぼっちでつながっている ーアラン・ド・ボトンのインタビューからー

毎週、楽しみに聞いている ポッドキャスト On Being は、このブログでも何度か話題にさせていただいていますが、先日のものは、哲学者のアラン・ド・ボトン(Alain de Botton)へのインタビューでした。アラン・ド・ボトンは以前、「ときめきの仕分けから成功は始まる」という記事で、彼のTED Talkを紹介させていただいています。哲学の話題というと抽象的で、途中で断念してしまうことも多いのですが、アラン・ド・ボトンのお話しは自分の体験や実感ともつながって、その上、いろいろなことを気づかせてもらってありがたい。このポッドキャストのホストのクリスタ・ティペット(Krista Tippett)のインタビューもいつも的を射ていて、聞きごたえがあります。その2人の会話ということで、特に、耳を澄ませて聞きました。そして共感できる言葉をいくつも見つけました。

”MS. TIPPETT: In this “Darkest Truth About Love,” you say the idea of love in fact distracts us from existential loneliness. You are irredeemably alone. You will not be understood. But also, behind that is the — as you say, these are dark truths, but it’s also a relief, as truth always ultimately is, if we can hear it. That again, that is the work of life is to reckon with what goes on inside us.
(ティペット:この「愛についての最も暗い真実」の中で、愛ということを考えると、我々は実際に本来孤独な存在であるのに、それがわからなくなってしまうとおっしゃっていますね。どうしようもないくらい独りぼっちなのに。理解してもらえることなんてないのに。でもその背後に、それは暗い真実であると同時に安らぎでもあると言われています。真実というのはいつも、つきつめて理解するとそうであるように。生きるというのは、心の中で何が起こっているかを考えていくことだということですね。) 
MR. DE BOTTON: Yes. I think one of the greatest sorrows we sometimes have in love is the feeling that our lover doesn’t understand parts of us. And a certain kind of bravery, a certain heroic acceptance of loneliness seems to be one of the key ingredients to being able to form a good relationship.
(ドゥ・ボトン:そうですね。恋人が自分の様々なことを理解してくれないという感覚は、愛し合う中で出会う大きな悲しみの1つだと思います。そしてある種の強さというか、潔く孤独を受け入れることが、良い関係を築くことのできる大切な要素の一つであるような気がします。) 
MS. TIPPETT: Isn’t that interesting? And it sounds paradoxical.
(ティペット:おもしろいですよね?なんだか逆説的というか。) 
MR. DE BOTTON: Of course. If you expect that your lover must understand everything about you, you will be — well, you’ll be furious pretty much all the time. There are islands and moments of beautiful connection, but we have to be modest about how often they’re going to happen. I think if you’re lonely with only — I don’t know — 40 percent of your life, that’s really good going. You may not want to be lonely with over 50 percent, but I think there’s certainly a sizable minority share of your life which you’re going to have to endure without echo from those you love.
(ドゥ・ボトン:その通りです。もしも、恋人は自分のことを全て理解しなくてはならないと期待しているとすると、あなたはきっと、そう、いつも怒ってばかりいることになるでしょうね。結びつきを感じる美しい瞬間というものはあるものですが、どのくらい生じるかとなると、ほどほどに考えておかないといけないでしょう。もしも、だいたい、人生の・・・よくわかりませんが、40%くらいを孤独だと思うとすれば、かなり良い感じだと思います。50%以上寂しいと思いたくはないでしょうから。でも、愛する人が共感してくれないことに耐えなくてはならなくなる状況は、人生のかなりをしめるはずだと思いますよ。) 
MS. TIPPETT: You know, I debated over whether I would discuss this with you, but I think I will. I’m single right now and have been for a few years, and it’s actually been a great joy. Not that I think I will be single forever or want to be single forever. Although, actually, I think I would be alright if I were, which is a real watershed. And also what this part of — this chapter of life has taught me to really enjoy more deeply and take more seriously are all the many forms of love in life aside from just romantic love or being coupled. Do people talk to you about that?
(ティペット:ところで、このことをここでお話しすべきかどうか、迷ったのですが、お話ししたいと思います。今、私、独りなんです。ここ何年かずっとそうです。そして、それがとても楽しいのです。これからもずっと独りでいるつもりだとか、独りでいたいだとか思っているわけではないのですが、そうなってもいいな、とも思うのです。そう思うようになったのは、画期的なことでした。また、この人生のこの部分のおかげで、ただ恋愛だとか恋人になる、結婚する、などとは別のいろいろな形の愛情を、より深くより真剣に楽しめるようになったのです。そんなことをおっしゃる人はいませんでしたか?) 
MR. DE BOTTON: Well, it’s funny because just as you were saying, “I’m single,” I was about to say, “You’re not.” Because we have to look at what this idea of singlehood is. We’ve got this word “single” which captures somebody who’s not got a long-term relationship.
(ドゥ・ボトン:いや、おかしなものです。あなたが「私、独りなんです」とおっしゃった時、「違いますよ」と言いそうになっていたんですよ。この独身とはどういうことかということを考えなくてはならないからです。私たちは、長期間に渡る恋愛関係を持たない人のことを指して言いますね。) 
MS. TIPPETT: But I have so much love in my life.
(ティペット:でも、私の人生は愛情でいっぱいなんです。) 
MR. DE BOTTON: That’s right. And another way of looking at love is connection. We’re all the time, we are hardwired to seek connections with others. And that is, in a sense, at a kind of granular level, what love is. Love is connection. And insofar as one is alive and one is in buoyant, relatively buoyant spirit some of the time, it’s because we are connected. And we can take pride in how flexible our minds ultimately are about where that connection is coming.
(ドゥ・ボトン:そうでしょう。そして、愛を見るもう一つの見方はつながりということです。私たちはいつだって、生まれつき他の誰かとのつながりを求めているのです。つまり、それが、本当に細かいところまでつめた意味で、愛とは何かということなのです。愛とはつながりです。そして、生きていて元気でいる限り、だいたい元気でいられるというのは、誰かとつながっているからなのです。そして自信をもってほしいのですが、私たちはつながることのできる場所を、ものすごく柔軟に受け入れることができるのです。)”
自分はこの人生では、結婚して家族をもって生きていきたいと願いました。そして、その願いはかなえられたので、「独身」ではありません。いわゆる「独身」でいることがどういうことであるのか、もう、おそらくわからなくなっているでしょう。それでも、人はひとりひとりが違う認知をしていて、違う物語の中で生きているということ。そのようなお互いをわかり合うことは大変に難しいことだということは、ひしひしと感じています。私たちは皆、孤独な存在だと言われると、その通りだと思います。その上で、いつもつながりを求めているというのも、やはりその通りだと感じます。夜空を見上げると、真っ暗な天空に星が1つ1つ浮かんでいるように、世界にぽつりと「自分」というひとりぼっちの存在があって、他の存在とつながっている。家族だったり、学生時代の友だちだったり、職場で出会う人だったり、本当に様々な人々とつながっていて、それが愛ということで。そういうことですね?
 人と人との関係も、時間の経過とともに刻々と変化していきます。今や夫は友達のようだし、子供は兄弟のようです。学生時代の友だちや職場の人は家族のようで、何が何だかわからない感じ。でも、いろんな人とつながっていることは、確かに感じられます。孤独な私の魂につながってくれている世界中のすべての人に、ありがとうと伝えたいバレンタイン・デーの夜です。

The quoted part is from;
ALAIN DE BOTTON The True Hard Work of Love and Relationships in On Being.
http://onbeing.org/programs/alain-de-botton-the-true-hard-work-of-love-and-relationships/