2011年のデビュー・アルバム「+」(プラス)は、申し分のないアルバムでしたが、2014年6月25日に発売された、エド・シーランの2枚目のアルバム「×」(マルティプライ)は、それを上回る素晴らしい出来栄えになっています。のびがあって透明で、なおかつ表現力のある歌声は相変わらず聴きごたえがあるし、日常の中の、誰も気づかないような小さな事柄を切り取って、心を伝える繊細な詩も感動的。ギターも打ち鳴らせばラップもしてみせる万能ぶり。ファレル・ウィリアムズを迎えたり、新境地を開拓することにも余念がない。17に及ぶ楽曲が収録されているのに、「これは、まあまあ」というようなものはなく、どの曲も充実しています。
エド・シーランのツイートは、彼の飾らない「男の子」っぷりが魅力で、ついフォロワーになってしまいました。食べ物のツイートがあったりします。メロン、とか、すいか、とか、チキン、とか。ただそれだけの短い言葉に、すごくうれしそうな様子がにじみ出ていて、ツイートというのも不思議なものだ、と思います。そして、そういうツイートをずっと追っていると、ここ2年くらい彼がいかに頑張ったかが、わかるような気がします。テイラー・スウィフトのREDツアーにずっと同行していた時期もあったし、なんだか激太りしていた時期や、朝から晩までプロモーションに奔走していることもありました。ここ2年間のエドの格闘が、この2枚目のアルバムに結実したのだ、と、そう思います。
ギター1本で歌う音楽小僧の魂はそのままに、「ものすごく売れてやる」という健全な野心も持ち合わせているようで、臆することなく、ポップな要素を取り入れたり、自分の中の暗い部分を暴露するような曲も作ったりしている。そんな風でいても、彼の核となる部分はいささかも損なわれることは無いようで、相変わらず、肩の力の抜けた人の好さそうな表情を見せている。そんなエドを見ていると、この人はもっと成長する。まだまだ、何かを取り込む土壌を持っている、と思わされます。
“I did everything last year,” he said exhaustedly. “Everything. Everything wrong and everything right. It was a very important year.” At one point, he moved to Los Angeles for a relationship, only to be dumped the day he arrived: “I literally landed from Canada, it ended, then I went to the house and unpacked my stuff.”
(「昨年はとにかく全部やったよ。全部、だよ。間違っていることも全部だし、正しいことも全部。ものすごく大事な1年だった」エドは疲れ切った様子でそう言った。ある時は、恋人のためにロサンゼルスに移動したのに、着いたその日に捨てられた。「大げさに言ってるわけじゃなくて、本当に、カナダから到着して、関係が終わって、家に帰って荷物をほどいた、そんな感じだった。」)
He continued: “I was in a situation where something was presented to me that I never thought would ever be possible. I felt like I had to do it, I should not let this go, and I know now that things on the surface aren’t always what they are.” (そして、こう続けた。「そんなことあり得ないだろう、っていうようなことが、目の前に差し出されてる、そんな状況だったんだ。ただもう、やっておかなくちゃ、このままにしておくものか、そう思えたよ。で、今わかるのは、表面に見えているものだけでは、本当のことはわからない、ってことだ。」)「良いことも悪いことも、目の前に差し出されたものを全て」やり、その経験を活かしきる。エドのように、私の人生にも様々なことが差し出されてきたし、今もこれからもそれは続くはずだと思う。正しいのかも、間違っているのかも、差し出された時点では、その意味はわからない。意味がわからないから、少し怖くもある。でも、振り返ってみると、本当に大切なことには、不思議と何か勇気のようなものがわいてきて、よくわからないままに「えいや」で飛び込んでしまっているような気がします。そして、それが、その後の流れに決定的に結びついているように思います。それは「頑張り」を強いられる困難の始まりであると同時に、飛躍へのチャンスになるということなのでしょうか。エドのセカンド・アルバムから、そんなことを思いました。
引用: The quoted part is from;
Jon Caramanica. "Ed Sheeran, lighter and Wiser, releases 'X'."The New York Times. 2014.
http://www.nytimes.com/2014/06/22/arts/music/ed-sheeran-lighter-and-wiser-releases-x.html?smid=tw-nytimes&_r=0
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