2017年8月28日月曜日

インスピレーションにしたがって生きる ーアグネス・マーティンの言葉からー

このブログのタイトルは、エジソンの
"Genius is one percent inspiration, ninety-nine percent perspiration."
(「天才とは、1パーセントのひらめきと、99パーセントの努力である」)
という言葉から作りました。学生時代から、小説や詩やエッセイのようなものから果ては漫画にいたるまで、文字を読んではその中にある言葉に、そういう考え方があったかと気づかされたり、イメージの美しさに感激したり、ふとした瞬間に思い出して励まされたりしてきました。また、そんな言葉を、何度も読んだりノートに書き留めてみたり、ということを繰り返してきました。このブログも、読んだり書いたりする手段がコンピューターに変わっただけで、相も変わらず、少女時代と同じことをやっているだけのようです。どうあれ、私にとっては、ある種の文章や言葉は、100%インスピレーションを与えてくれる大切なものに他なりません。
 今回は、また、Brainpickingsの中から、アメリカの抽象画家Agnes Martin(アグネス・マーティン)の言葉を見つけました。この文章の中で、アグネス・マーティンはインスピレーションとは何かについて語り、インスピレーションに従って生きることの大切さを述べています。
「agnes martin」の画像検索結果
"The world evolves due to changes that take place in individuals. By individuals I mean all living things. The world evolves due to a growing awareness in the lives of all things and is expressed in their actions. The actions of all things are guided by a growing awareness of life. We call it inspiration. Living by inspiration is living. Living by intellect — by comparisons, calculations, schemes, concepts, ideas — is all a structure of pride in which there is not beauty or happiness — no life." 
(「世界は個々に起こる変化によって進化していきます。ここでいう個々というのは、生きとし生けるもの、すべてのことをいいます。世界はすべてのものの生の中で、意識が高まることで進化していきます。そしてそれは行動に表れるのです。すべてのものの行動は、意識の高まりに導かれるからです。私達はその意識の高まりのことをインスピレーションと呼んでいます。インスピレーションに従って生きることが、本当に生きることなのです。頭で生きること、つまり、比較とか、計算とか、計画とか、概念とか、思想とか、そういったものは、プライドを作り上げるだけで、そこには、美しさや幸せはありません。生がないのです。」)
"Where pride walks nothing of life remains. It is the supreme destroyer of life. Pride leaves nothing in its path. It is death in life."
(「プライドの進む後、人生に何も残るものはない。プライドは、人生を破壊する最たるものです。プライドは、人生に歩みに何も残さないのです。それは、人生における死です。」)

"Hold fast to your life, to beauty and happiness and inspiration, and to obedience to inspiration. Do not imitate others or seek advice anywhere except from your own mind. No-one can help you. No-one knows what your life should be. No-one knows what your life or life itself should be because it is in the process of being created.
Life moves according to a growing consciousness of life and is completely unpredictable. If you live according to human knowledge, according to precept, values and standards, you live in the past. If you live entirely in the past you will not know beauty or happiness and you will not in fact live. You must believe in life. Believe that you can know the truth about life."
(「自分の人生を、美と幸福とインスピレーションをしっかりとつかみなさい。インスピレーションに従うのです。他人の真似をしたり、自分自身以外のどこかからのアドバイスを求めてはいけません。誰もあなたを助けることはできないのです。誰もあなたの人生がどうなるかなんてわからないからです。誰もあなたの人生がどうなるかわからない、なぜなら、それは、創り上げられている過程にあるからです。人生に対する意識の高まりに従って、人生は動いていくし、人生は、完全に予測不可能なのです。人間の知識とか、教えとか価値とか基準なんかに依って生きれば、過去に生きることになります。完全に過去にいきると、美しさも幸せもわからないし、本当に生きたことにはならないでしょう。人生を信じなくてはいけません。自分も人生の真実を知ることができると信じなさい。」)
このアグネス・マーティンの言葉を読むと、なんだか元気が出るような気がします。おそらく、この言葉は真実であるに違いない、という気がするのです。でも、真実に違いないと思う一方、「意識の高まり」とか、「インスピレーション」とか言われても、実際のところ、わかったようなわからないような・・・。比較とか計算とか計画とか、頭で考える方が、むしろ単純で想定しやすいのではないでしょうか。
 昨年の今頃、1週間程、入院手術することがありました。体を動かすと痛いし、特に何をすることもできず、ベッドの上でうとうとしたり、とりとめのないことを考えたりしていました。その時に、ふと、自分が一番力を発揮するのは、「受容する」ということにおいてではないのだろうか、自分はそのために生まれてきたのではないだろうか、という思いにとらわれました。そして、この入院を機に、これからは意識してそうしてみようと思いました。例えば、音楽を聴くとき。まず、心を静かに落ち着けて、バックに流れるベースの音やドラムの音にも注意を払って、じっくりと音楽に耳を傾ける。人の話を聴くとき。その人の声や目の色まで感じながら、まるごと、人の話に全身で対峙する。何かを読むときも、飛ばし読みしたりせずに、一つ一つの言葉を大切に読んでいく。食事をする時だって、慌てて飲み込んだりせずに、どんな味かどんな風味か、よく味わって食べるのです。自分の周りのあらゆるもののメッセージをつかみ、なるべく正確に理解し、それをしっかりと受け止めていくのだと、そういうことを思いました。
 そういう風に生きていれば、インスピレーションだって、捉え損ねることはないのではないでしょうか?或は、その時の「受容する」ために生まれてきたのだ、というその考え自体が、インスピレーションだったのかもしれません。

The quoted part is from;
Beloved Artist Agnes Martin on Our Greatest Obstacle to Happiness and How to Transcend It  in brainpickings

2017年6月3日土曜日

美しい生活 ーザイナブ・サルビのインタビューからー

人の一生には終わりがあって、しかも一度きりである。いつその終わりが来るのか、この先もどうなるのか、何もわからないままに、私たちは生きているし、また生きて行かなくてはいけません。それでも自分の人生に満足できるように、悔いのないように生きていきたい。誰もがそう思うのではないでしょうか。私ももちろんそうです。

生きている間には、たくさんの人に出会い、様々なことに従事することになります。そして、その自分を取り巻く無数の事柄に対して、多様な感じ方、捉え方をすることができる。何を大切にしてどう考えればよいのか。大切なものは人それぞれだし、正しい答えなどというものは期待できないでしょう。その判断はとても難しいものだと思います。

NPRのポッドキャスト、TEDラジオ・アワーで、Endurance(耐えること)というテーマが取り上げられたことがありました。その中で、イラク育ちの女性の権利のための活動家、ザイナブ・サルビのインタビューが取り上げられました。

ザイナブ・サルビはTEDトークの中では、戦争には2つの面があると述べていました。1つは前線にいる兵士や戦闘のこと、もう1つはその背後で、死に物狂いで生活を続けている女性や子供のことです。語られるのはいつも、前線にいる兵士や戦闘のことですが、懸命に日常生活を前に進めようとしている女性や子どもたちのことを忘れてはいけないというのです。

そして、サルビがTEDラジオ・アワーのインタビューで、語っていたことが胸に迫りました。


SALBI: You know, when I first went to war zones, I would, like, you know, wear my jeans and sneakers. And like, OK. I'm a women's right activist and a humanitarian, and I'm here to help people. And honestly, it was from the women that I thought I was helping who taught me how to enjoy beauty and celebrate it. It was women in Bosnia, for example, during the days of Sarajevo. It was longest besieged city. And I went in the besiege. And I went - I was like OK - what do you want me to bring you next time I'm here? And the woman said lipstick. I'm, like, lipstick?
(サルビ:はじめて交戦地帯に入った時、私は、ジーンズとスニーカーを履いて。で、よし、私は女性の権利のための活動家で、人道主義者よ。人々を助けるためにここに来ました、という感じでした。そして、なんたることか、私は自分が助けていると思っていた女性たちから、美しさを楽しんで祝福するというのはどういうことかというのを教わったのでした。例えば、サラエボにいた当時の、ボスニアの女性です。サラエボは最も長い間、包囲されていた街でした。私は包囲区域に入りました。入っていって、さあ、次にここに来るときには、何を持って来てほしい?って。すると、その女性は、口紅、と言ったのです。私は、く、くちべに?ってなもんです。) 
RAZ: (Laughter). 
(ラズ:(笑)) 
SALBI: What are you talking about? Don't you want - I don't know - vitamins? You know, something, I don't know. And they're like lipstick. I was like - why? And they said because it's the smallest thing we put on every day and we feel we are beautiful, and that's how we are resisting. They want us to feel that we are dead. They want us to feel that we are ugly.
(サルビ:何言ってるの?あなたが必要なのはそういうものじゃないんじゃないの?わからないけど、ビタミン剤とか?ね、何か、ほら、わからないけど。でもみんな、口紅、みたいに言うんですよ。私はといえば。どういうこと?って。すると、みんな言うのです。それはほんの小さなものですが、毎日身につけて、私たちは自分は美しいと思う。それが、私たちの闘い方なのです。やつらは私たちが、自分はもうダメだ、とか、自分はみにくい存在なんだ、と感じていればよいと思っているんです。) 
And one woman, she said, I put the lipstick every time I leave because I want that sniper, before he shoots me, to know he is killing a beautiful woman. And I look at her, and I was, like, that's how she's keeping her beauty. Like, who am I to take myself so seriously when they are keeping life going through beauty and through the joy, just as my mother did when I was a child?
(ある女性はこう言いました。出かけるときはいつも口紅をつけます。銃を持つ人が、私を撃つ前に、美しい女性を殺しているのだ、と思ってほしいから、と。私はその人を見ました。そして、そういう風に自分の美というものを大切にしているのだ、とわかったのです。美しさや喜びの中で人生を生きていくとすると、自分自身以外の誰が、ちょうど子供のころに母がしてくれたように、自分のことを真剣に考えてくれるでしょうか?) 
And so that act of resilience - you keep the joy. You keep the laughter. You keep singing the song. You keep the melodies of the song going. That's how women resist and show their resilience in the darkest of circumstances, and that's what war is.
(つまり、抵抗するという行為とは、あなたが喜びを忘れず、あなたが笑うことを忘れず、あなたが歌を歌い続ける、ということです。歌い続ける歌のメロディーを忘れない、ということなのです。女性たちは最悪の状況の中で、このように闘い、このように抵抗を示すのです。戦争とはそういうものです。)
そう、戦争中でも毎日の生活は続いていく。幸運なことに、平和な場所に暮らすことができている私にとっても、結局、毎日の生活が一番大事。そう思います。食べる。着る。休む。清潔に保つ。仕事や他のことにたとえ変化があったとしても、生活の部分はいつも変わらずに自分についてきます。その部分を面倒に思わずに、かといって、過度に振り回されずに、きちんと向き合っていくことこそが人生なのではないでしょうか。その生活の中で、物事の本質を見失わないでいること、倫理観の軸があること、に気を付けていたいと思います。そして、それ以上に、生活に美しさを求めることが本当に大切だと思います。以前の投稿にも書いたのですが、美しさをなめてはいけない。美しさを求めてやまない、自分の気もちにじっと耳を傾けるべきだと思います。

The quoted part is from:
How Do People Live and Cope In The Midst Of Violent Conflict? ZAINAB SALBI
February 11, 20161:45 PM "To Endure"
http://www.npr.org/2016/02/11/466044738/how-do-people-live-and-cope-in-the-midst-of-violent-conflict

2017年4月14日金曜日

「小さな喜び」を大切にできる能力 ーヘルマン・ヘッセの言葉からー

物事を何もかも完璧にすることはできないでしょう。1日は24時間しかないし、そのうち何時間かは必ず眠らなくてはいけません。自分の関わる全てのことを、自分が理想とする形で進めようとすると、どこかで無理が生じてくる。仕方がないから、様々な観点から、この件はこのくらいでおさめるのがベストであろう、と思われる「落としどころ」を見定めて、そこで手を打つことにする。その決定には自分の性質や価値観、それまでの経験などが映し出されていることと思います。

そうして、あることだけが極端にならないように、何かに無理が生じないように、かといって、それが怠惰や臆病にすり替わってしまわないように気を付けながら、うまくバランスを取っていく。それが人生というものではないでしょうか。

Brainpickingsの投稿に、ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse)の文章が取り上げられていました。ヘルマン・ヘッセといえば、『車輪の下』が有名ですが、先に思い出すのは、中学校の教科書で読んだ短編『少年の日の思い出』の方でしょうか。Brainpickingsの記事の中で、ヘッセは物事に適度に取り組んで、毎日の生活に小さな喜びを見つけることの大切さについて語っています。

「Hermann Hesse」の画像検索結果
                            

”The ability to cherish the “little joy” is intimately connected with the habit of moderation. For this ability, originally natural to every man, presupposes certain things which in modern daily life have largely become obscured or lost, mainly a measure of cheerfulness, of love, and of poesy. These little joys … are so inconspicuous and scattered so liberally throughout our daily lives that the dull minds of countless workers hardly notice them. They are not outstanding, they are not advertised, they cost no money!”
「この『小さな喜び』を大切にできる力というのは、ものごとをほどほどにすることと深く関わっています。というのは、元来誰にでも普通に備わっているはずのこの力が前提としているのは、現代の日常生活では、ものすごく見えづらく、それどころか、損なわれてしまったような物事、ちょっとしたほがらかさとか愛情とか詩だからなのです。こういう数々の小さな喜びは、あまり目立たない上に、毎日の生活のあらゆる場面に、大いに散らばっているので、感覚の鈍っている多くの労働者は、ほとんど気づくことがないのです。目立たないし、知らされないし、お金もかからないのだから!」 
”Just try it once — a tree, or at least a considerable section of sky, is to be seen anywhere. It does not even have to be blue sky; in some way or another the light of the sun always makes itself felt. Accustom yourself every morning to look for a moment at the sky and suddenly you will be aware of the air around you, the scent of morning freshness that is bestowed on you between sleep and labor. You will find every day that the gable of every house has its own particular look, its own special lighting. Pay it some heed if you will have for the rest of the day a remnant of satisfaction and a touch of coexistence with nature. Gradually and without effort the eye trains itself to transmit many small delights, to contemplate nature and the city streets, to appreciate the inexhaustible fun of daily life. From there on to the fully trained artistic eye is the smaller half of the journey; the principal thing is the beginning, the opening of the eyes.”
「とにかく一度試してみてください。木とか、大きく広がる空などというものはどこにでも見ることができるものです。青空である必要もない。何らかの方法で、太陽の光はいつも、光そのものを感じさせてくれます。毎朝、少しの間、空を見る習慣をつくってください。すると、自分の周りにある空気に、眠りと仕事の合間に、朝の新鮮な香りが自分に与えられていることに、ふと気づくようになるでしょう。毎日、家という家の屋根がそれぞれに違った形をしていたり、独自の照明があるのに気付くでしょう。ちょっと注意してみてください。その日の残りが、何だか満ち足りていたり、自然と共にあることを感じられたりするのがわかるかもしれません。そのうち少しずつ、一生懸命にならなくても、目が鍛えられて、たくさんの小さな喜びを伝え、自然と街の通りについて考え、毎日の生活に尽きることのない楽しさを感じるようになるでしょう。今いるところから、十分に鍛えられた芸術家の目にたどりつくまでは、そう遠くない道のりです。大切なのは、始めることです。まず、目を開いてみることなのです。」
忙しくしていると、つい後回しにしてしまいがちですが、"Cheerfulness, love and poesy "(ちょっとしたほがらかさとか愛情とか詩) などというものは、本当に毎日の中で大切なものだと思います。現役世代で仕事が忙しい。フルタイムの仕事と育児や介護のかけもちをしている。皆それぞれに、心にも時間にも余裕はないものですが、それでも、人生のどの段階でも、それを手放してはいけないと思う。また、その大切さや意味をきちんと次世代に教えて、子ども達がちゃんと、"the fully trained artistic eye" (十分に鍛えられた芸術家の目)を持つようにしてあげる。そして、その大切さをお互いに保障し合うような社会にしようと努力するのが、大人の義務ではないかと思います。

The quoted part is from

"Hermann Hesse on Little Joys, Breaking the Trance of Busyness, and the Most Important Habit for Living with Presence" from brainpickings.

2017年2月14日火曜日

独りぼっちでつながっている ーアラン・ド・ボトンのインタビューからー

毎週、楽しみに聞いている ポッドキャスト On Being は、このブログでも何度か話題にさせていただいていますが、先日のものは、哲学者のアラン・ド・ボトン(Alain de Botton)へのインタビューでした。アラン・ド・ボトンは以前、「ときめきの仕分けから成功は始まる」という記事で、彼のTED Talkを紹介させていただいています。哲学の話題というと抽象的で、途中で断念してしまうことも多いのですが、アラン・ド・ボトンのお話しは自分の体験や実感ともつながって、その上、いろいろなことを気づかせてもらってありがたい。このポッドキャストのホストのクリスタ・ティペット(Krista Tippett)のインタビューもいつも的を射ていて、聞きごたえがあります。その2人の会話ということで、特に、耳を澄ませて聞きました。そして共感できる言葉をいくつも見つけました。

”MS. TIPPETT: In this “Darkest Truth About Love,” you say the idea of love in fact distracts us from existential loneliness. You are irredeemably alone. You will not be understood. But also, behind that is the — as you say, these are dark truths, but it’s also a relief, as truth always ultimately is, if we can hear it. That again, that is the work of life is to reckon with what goes on inside us.
(ティペット:この「愛についての最も暗い真実」の中で、愛ということを考えると、我々は実際に本来孤独な存在であるのに、それがわからなくなってしまうとおっしゃっていますね。どうしようもないくらい独りぼっちなのに。理解してもらえることなんてないのに。でもその背後に、それは暗い真実であると同時に安らぎでもあると言われています。真実というのはいつも、つきつめて理解するとそうであるように。生きるというのは、心の中で何が起こっているかを考えていくことだということですね。) 
MR. DE BOTTON: Yes. I think one of the greatest sorrows we sometimes have in love is the feeling that our lover doesn’t understand parts of us. And a certain kind of bravery, a certain heroic acceptance of loneliness seems to be one of the key ingredients to being able to form a good relationship.
(ドゥ・ボトン:そうですね。恋人が自分の様々なことを理解してくれないという感覚は、愛し合う中で出会う大きな悲しみの1つだと思います。そしてある種の強さというか、潔く孤独を受け入れることが、良い関係を築くことのできる大切な要素の一つであるような気がします。) 
MS. TIPPETT: Isn’t that interesting? And it sounds paradoxical.
(ティペット:おもしろいですよね?なんだか逆説的というか。) 
MR. DE BOTTON: Of course. If you expect that your lover must understand everything about you, you will be — well, you’ll be furious pretty much all the time. There are islands and moments of beautiful connection, but we have to be modest about how often they’re going to happen. I think if you’re lonely with only — I don’t know — 40 percent of your life, that’s really good going. You may not want to be lonely with over 50 percent, but I think there’s certainly a sizable minority share of your life which you’re going to have to endure without echo from those you love.
(ドゥ・ボトン:その通りです。もしも、恋人は自分のことを全て理解しなくてはならないと期待しているとすると、あなたはきっと、そう、いつも怒ってばかりいることになるでしょうね。結びつきを感じる美しい瞬間というものはあるものですが、どのくらい生じるかとなると、ほどほどに考えておかないといけないでしょう。もしも、だいたい、人生の・・・よくわかりませんが、40%くらいを孤独だと思うとすれば、かなり良い感じだと思います。50%以上寂しいと思いたくはないでしょうから。でも、愛する人が共感してくれないことに耐えなくてはならなくなる状況は、人生のかなりをしめるはずだと思いますよ。) 
MS. TIPPETT: You know, I debated over whether I would discuss this with you, but I think I will. I’m single right now and have been for a few years, and it’s actually been a great joy. Not that I think I will be single forever or want to be single forever. Although, actually, I think I would be alright if I were, which is a real watershed. And also what this part of — this chapter of life has taught me to really enjoy more deeply and take more seriously are all the many forms of love in life aside from just romantic love or being coupled. Do people talk to you about that?
(ティペット:ところで、このことをここでお話しすべきかどうか、迷ったのですが、お話ししたいと思います。今、私、独りなんです。ここ何年かずっとそうです。そして、それがとても楽しいのです。これからもずっと独りでいるつもりだとか、独りでいたいだとか思っているわけではないのですが、そうなってもいいな、とも思うのです。そう思うようになったのは、画期的なことでした。また、この人生のこの部分のおかげで、ただ恋愛だとか恋人になる、結婚する、などとは別のいろいろな形の愛情を、より深くより真剣に楽しめるようになったのです。そんなことをおっしゃる人はいませんでしたか?) 
MR. DE BOTTON: Well, it’s funny because just as you were saying, “I’m single,” I was about to say, “You’re not.” Because we have to look at what this idea of singlehood is. We’ve got this word “single” which captures somebody who’s not got a long-term relationship.
(ドゥ・ボトン:いや、おかしなものです。あなたが「私、独りなんです」とおっしゃった時、「違いますよ」と言いそうになっていたんですよ。この独身とはどういうことかということを考えなくてはならないからです。私たちは、長期間に渡る恋愛関係を持たない人のことを指して言いますね。) 
MS. TIPPETT: But I have so much love in my life.
(ティペット:でも、私の人生は愛情でいっぱいなんです。) 
MR. DE BOTTON: That’s right. And another way of looking at love is connection. We’re all the time, we are hardwired to seek connections with others. And that is, in a sense, at a kind of granular level, what love is. Love is connection. And insofar as one is alive and one is in buoyant, relatively buoyant spirit some of the time, it’s because we are connected. And we can take pride in how flexible our minds ultimately are about where that connection is coming.
(ドゥ・ボトン:そうでしょう。そして、愛を見るもう一つの見方はつながりということです。私たちはいつだって、生まれつき他の誰かとのつながりを求めているのです。つまり、それが、本当に細かいところまでつめた意味で、愛とは何かということなのです。愛とはつながりです。そして、生きていて元気でいる限り、だいたい元気でいられるというのは、誰かとつながっているからなのです。そして自信をもってほしいのですが、私たちはつながることのできる場所を、ものすごく柔軟に受け入れることができるのです。)”
自分はこの人生では、結婚して家族をもって生きていきたいと願いました。そして、その願いはかなえられたので、「独身」ではありません。いわゆる「独身」でいることがどういうことであるのか、もう、おそらくわからなくなっているでしょう。それでも、人はひとりひとりが違う認知をしていて、違う物語の中で生きているということ。そのようなお互いをわかり合うことは大変に難しいことだということは、ひしひしと感じています。私たちは皆、孤独な存在だと言われると、その通りだと思います。その上で、いつもつながりを求めているというのも、やはりその通りだと感じます。夜空を見上げると、真っ暗な天空に星が1つ1つ浮かんでいるように、世界にぽつりと「自分」というひとりぼっちの存在があって、他の存在とつながっている。家族だったり、学生時代の友だちだったり、職場で出会う人だったり、本当に様々な人々とつながっていて、それが愛ということで。そういうことですね?
 人と人との関係も、時間の経過とともに刻々と変化していきます。今や夫は友達のようだし、子供は兄弟のようです。学生時代の友だちや職場の人は家族のようで、何が何だかわからない感じ。でも、いろんな人とつながっていることは、確かに感じられます。孤独な私の魂につながってくれている世界中のすべての人に、ありがとうと伝えたいバレンタイン・デーの夜です。

The quoted part is from;
ALAIN DE BOTTON The True Hard Work of Love and Relationships in On Being.
http://onbeing.org/programs/alain-de-botton-the-true-hard-work-of-love-and-relationships/

2017年1月29日日曜日

言葉の力と物語の力 ―オバマ大統領のインタビューから―

先日、アメリカ大統領の就任式が執り行われ、とうとう、オバマ大統領の任期が終わってしまいました。任期の間に、もちろん多くのことを成し遂げられたわけですが、オバマ前大統領といえば、やはり、いろいろな場面での彼のスピーチが一番印象に残ります。さわやかな弁舌。明確で力強い言葉。時には歌を歌ったり、涙ぐんだり。しっかりと「伝わる」言葉の数々が思い出されます。

ニューヨークタイムズの記事で、オバマ前大統領が読書について語っている記事を見つけました。
子どもの頃から読書好きで、大統領の職に就く前に、既に、『マイ・ドリーム: バラク・オバマ自伝』(2007)木内裕也、他(翻訳)という本を書いて出版したことなどについて語っておられました。


That period in New York, where you were intensely reading. 
(その頃、ニューヨークで、読書に没頭されていたのですね。) 
"I was hermetic — it really is true. I had one plate, one towel, and I’d buy clothes from thrift shops. And I was very intense, and sort of humorless. But it reintroduced me to the power of words as a way to figure out who you are and what you think, and what you believe, and what’s important, and to sort through and interpret this swirl of events that is happening around you every minute." 
(1人、世間から隔離されていたような感じでした。本当に。持っていたのはお皿1枚とタオル1枚で、洋服は古着屋で買って。ものすごくぴりぴりしていて、ちょっとおもしろみのない人間でした。でも、読書に没頭する生活が、あらためて言葉の力に気付かせてくれました。自分がどんな人間で、何を考え、何を信じ、何が大切なのかを突きとめる。また、常に次々と休みなく自分の周りで起こる出来事を整理したり、解釈したりする、その手段としての言葉の力にです。)  
"And so even though by the time I graduated I knew I wanted to be involved in public policy, or I had   these vague notions of organizing, the idea of continuing to write and tell stories as part of that was valuable to me. And so I would come home from work, and I would write in my journal or write a story or two."
(そして、私は大学を卒業するころには、自分がやりたいのは公共政策に関わることだ、とわかっていたし、あるいはぼんやりと組織づくりをするようなことも意識していたのですが、書くということを続ける、また、その一つとして、何かを物語ることを続けるという考えは、私にとっては大切なことでした。だから、仕事から戻ると、日記を書いたり、1つ2つ物語を書いたりしていました。)

"The great thing was that it was useful in my organizing work. Because when I got there, the guy who had hired me said that the thing that brings people together to have the courage to take action on behalf of their lives is not just that they care about the same issue, it’s that they have shared stories. And he told me that if you learn how to listen to people’s stories and can find what’s sacred in other people’s stories, then you’ll be able to forge a relationship that lasts.

But my interest in public service and politics then merged with the idea of storytelling." 
(すばらしいのは、私の組織づくりの仕事の中でもそれが役に立ったということでした。その仕事に就いた時、私を雇ってくれた人がこう言 ったのです。人々が結び付き、自分たちの生活のために行動を起こす勇気をもつようになる。人々にそうさせるのは、ただ、同じ問題に関心を寄せている、ということではない。みんなが同じ「物語」を共有しているということなのだ、と。どのように人々の物語に耳を傾けるべきかを学び、その他者の話の中に、何か特別なものを見い出すことができるなら、その時は、長く続く人間関係を作り上げることができるでしょう、と。 
公職とか政治に対する私の興味がまずあって、それが、物語を語るという考えと融合したのです。)

私たちは言語を通して人格をみがき、そして、言語を使って、生きていくための物語を語る。時には誰かの語る物語を信じることもある。誰かと物語を共有することもある。オバマ前大統領は、豊かな読書体験に裏付けられた、はっきりと切れの良いパワフルな言葉で、人々が信じることのできる「物語」を雄弁に語り、多くの人を結び付け巻き込みながら、政治を運んでいた。そのあり方こそ、リーダーのあるべき姿なのではないかと思います。別に私はリーダーでもなんでもありませんが、それでも、言葉を使って生きている一人の人間として、言葉の力、物語の力を十分に心において、決して侮ることのないように、丁寧に言葉に向き合って、生きていきたいものだと思いました。

The quoted part is from:
Transcript: President Obama on What Books Mean to Him
JAN. 16, 2017 The New York Times
https://www.nytimes.com/2017/01/16/books/transcript-president-obama-on-what-books-mean-to-him.html?smid=tw-nytimes&smtyp=cur&_r=0