映画『グッドウィルハンティング』は私の大好きな映画の1つですが、ロビン・ウィリアムス扮するショーンがマット・デイモン扮するウィルに語りかける印象的なシーンがあります。長いセリフですが長さを感じさせず、大変な説得力を持って心に届いてくる。このロビン・ウィリアムスの名演に触発されて、是非、この言葉を語り直してみたい、という衝動にかられました。もう20年近く前の映画で、DVDの吹き替えはもちろん、日本語版のスクリプト等、ありとあらゆる(すばらしい)翻訳をどこででも目にすることができるような現在、無謀な挑戦なのは百も承知なのですが。
"So, if I asked you about art, you'd probably give me the skinny on every art book ever written. Michelangelo. You know a lot about him. Life's work, political aspirations, him and the pope, sexual orientation, the whole works, right? But I bet you can't tell me what it smells like in the Sistine Chapel. You've never actually stood there and looked up at that beautiful ceiling. Seen that....If I ask you about women, you'd probably give me a syllabus of your personal favorites. You may have even been laid a fewtimes. But you can't tell me what it feels like to wake up next to a woman and feel truly happy. You're a tough kid. I ask you about war, you'd probably uh...throw Shakespeare at me, right? "Once more intothe breach, dear friends." But you've never been near one. You've never held your best friend's head in yourlap, and watched him gasp his last breath looking to you for help. I ask you about love, y'probably quote me a sonnet. But you've never looked at a woman and been totally vulnerable...known someone that could level you with her eyes. Feeling like God put an angel on Earth just for you..who could rescue you from the depths of Hell. And you wouldn't know what it's like to be her angel, n to have that love for her be there forever. Through anything. Through cancer. And you wouldn't know about sleepin' sittin' up in a hospital room for two months, holding her hand because the doctors could see in your eyes that the terms visiting hours don't apply to you. You don't know about real loss, because that only occurs when you love something more than you love yourself. I doubt you've ever dared to love anybody that much. I look at you: I don't see an intelligent, confident man. I see a cocky, scared shitless kid.... "何でも知っていて、頭の切れる天才ウィルは、この映画できら星のごとく登場したハーバード大のマット・デイモンの姿と重なります。彼は弱冠20代にしてこのセリフを書いているわけで、経験はまだ積み重ならない年齢なのに、経験の持つ重みをもうしっかりと理解していて、それをロビン・ウィリアムズと対比してみせるなんてすごい。やっぱりこの方も天才なのでしょう。そして、ロビン・ウィリアムス。このセリフの語りぶりで、彼が役柄だけでなく実際に経験の器を備えた、大きな俳優に他ならないことがわかります。知らない間にどんどん年齢は積みあがっていくようですが、何とか、年齢に応じたしっかりとした経験を、同時に積み重ねていきたいものだと思います。
(アートのことを尋ねたら、君はこれまでに書かれたあらゆる本にあったポイントを教えてくれるだろう。例えば、ミケランジェロ。君はいろんなことを知っている。代表作、政治的野心、ローマ法王との関係、性的嗜好、全作品・・・、そうだろう?でも、システィーナ礼拝堂がどんな匂いがするのかなんて、君はきっと知らないだろう。実際にそこに立って、あの美しい天井を見上げたことはないから。もし女性のことを尋ねたら、好みのタイプを一覧にして教えてくれるかもしれないね。そういう子と何度か寝たことだってあるかもしれない。でも、一人の女性の隣で目を覚まして心から幸せを感じる。それがどういうことかは、わからないだろう。君は強い。戦争のことでも聞いてみよう。するとシェイクスピアの1節でも飛んでくるかもしれないね。「もう一度あの突破口へ突撃だ、諸君」って。でも、君は戦地に近寄ったこともない。一番大切な友の頭をひざに抱いて、君を見つめて助けを求める友が、息を引き取るのを看取ったことなどない。愛について君に尋ねたとしたら、ソネットでも引用してくるかもしれないね。でも、ある一人の女性に対して、自分の何もかもをさらけだしたことがあるだろうか。その目を見ただけでどうしようもなくなる誰かと知り合ったことは。神様が天使を地上に遣わして下さったような気がするんだ。地獄の底から自分を救ってくれるために。そして、わからないだろう。自分が逆にその人の天使になる、ということがどういうことか。その人を思う気持ちをそこに永遠に持ち続けるんだよ。何があっても。がんになっても。2か月もの間、病室で寝起きする。彼女の手を取って。面会時間なんか関係ないと思っているのは、君の眼を見れば、お医者さんもわかってくれる。君には本当の喪失感なんて、わからないはずだ。だって、それは、自分自身を愛するよりももっと、他のものを愛するからこそわかることだからね。誰かをそこまで愛する勇気なんてないだろう。君を見てると、賢いどっしりと自信を備えた大人には見えない。ただ、うぬぼれて気の毒なほど怯えている子どもにしか思えないよ。・・・)
"Good Will Hunging" (1997, Miramax Films)